山が見えることを気に入って住宅を購入したケースは?
例えば、二階の窓から山が見えるのを気に入って、住宅を購入したところ、その住宅の前の空き地に10階建てのマンションが建つことになったようなケースです。
せめて5階建てのマンションであれば景色も損なわれないのですが、山が見えなくなるという理由だけで、このマンション計画の変更は要求できるのでしょうか?
このようなケースの場合、確かに景色が見えなくなってガッカリという気持ちもわかりますが、家から山が見えるというのは、たまたま家と山の間にさえぎるものがなかったという偶然にすぎません。
また、「騒音がひどい」とか「日当たりが悪くなる」などといった日常生活に影響を及ぼしかねない問題と比べれば、「山が見えなくなる」という理由は、特に必要性の高いものではありません。
なので、これを権利として確立するには少々無理があります。
眺望権は認められないのですか?
眺望権というのは、窓から見える美しい景色をさえぎらせない権利のことですが、一般住宅の眺望権は、なかなか認められないのが現状です。
ただし、保護する必要があると判断されれば、要求が認められることもあります。
例えば、眺めが売りものの旅館などは、「高い建物が建つことで景観が損なわれ、客が減る」というケースもあると思われます。
このようなケースの場合には、営業妨害につながると判断され、建築を禁止することもできます。
しかしながら、これはあくまでも商売が絡んだときの話であり、営業を目的としない普通の住宅の眺望権というのは、認められにくいのが現実です。
ちなみに、2009年に横浜地裁で、別荘の眺望利益を認め、建築禁止の仮処分を決定するという画期的な司法判断が出されていますので、眺望や景観をめぐる司法判断については、今後大きく変わる可能性もあるといえます。
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